
「あのさ、鍵屋から冬色のお菓子貰ったんだ。冬だけの限定なんだって」
そう言いながらルカは缶の蓋を開ける。
「綺麗だね、蓋を開けたらきらきらするし甘いにおいがする。冬を一場面ずつ切り取ったみたいだ」
「この兎のクッキーとか、缶の中で跳ねまわっているみたい。暖かくなるまで眠るはずだったのに、起きちゃったのかな」
「新鮮な景色に目が輝いて、白い景色の中を駆け回ってるんだろうね。きっと跳ねた後は雪が転がって玉になって、舞った雪は光に反射して花が咲いたみたいかも」
「雪玉が出来たら友達ができるね。そしたら兎が新しくできた白い友達に挨拶してさ、日が暮れるまで遊ぶんだ」
「日が暮れてきたら星が出てくるね」
「一緒に一等星を見つけて…。そのあとはどうするんだろう」
「疲れて家に帰って、春が来るまで眠って。起きたら白い友人は消えてしまっているかも…」
「そっか、起きたら溶けちゃってるのか…」
「なんてね。きっと食べる人によって結末なんていくらでも変えられてしまうよ。ボク達の過ごす冬もさ、こうして過ごしてるうちにあっという間に過ぎ去ってしまうね」
「でもまだまだ寒くてさ。俺、朝は布団から出たくないもん」
「じゃあ、むつにココア淹れてもらおう。そろそろ帰ってきてるはず、三人で考えたらまた違う結末になるかもしれないよ」
「ついでに幽霊達も連れてってあげよう。さっきから膝の上に登ってくるんだ」
「そうだね、一緒にお菓子を食べながら聞いてもらおう。じゃあ行こうか」
甘く白いお菓子と半透明の体に背景を写す幽霊達を連れて、目指す人がいる場所へ歩き出した。
さよなら白い季節、また会う日まで。
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